場末の。

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ワタモテレビュー喪121「モテないし父親と出かける」

9月21日(木)に、待望の私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!の喪121「モテないし父親と出かける」が公開されました!

 

www.ganganonline.com

 

もし今回のレビュー更新を待っていた方がいらっしゃいましたら、遅くなってしまい大変申し訳ありませんでした。iOS11とやらにやられてしまいました。(対応的な意味で)

 

閑話休題

父親と出かける」。このタイトルを最初見た時、思わず目を丸くしてしまいました。
まさか素顔が今まで明らかになっておらず、母親と比べると幾分出番の少ない父親にスポットライトが当たるとは。
前回の喪120が2年生最後の日でしたので、今回は春休みに突入して、家でダラダラして智貴にウザ絡みをするか、もしくはゆうちゃんと遊びに行くのかな、と思っていたのですが、予想が少し外れてしまいましたね。(打ち上げの別視点は単行本のおまけに収録されそうな感じがします)

 

 

もこっちの父親といえば、BLゲームを大画面でプレイしている最中に、電動マッサージ機を手に持った状態でもこっちが居眠りしてしまった時(傍から見ると……)、何も言わずにベッドまで運んであげた優しい人という印象があります。
これはアニメでも放映されたエピソードですし、印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

 

 

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さて、今回のプレビュー画像は釣りをするもこっちです!匿名掲示板で人を釣った時のイメージ映像等ではありません。
……珍しくアウトドアな休日の過ごし方ですが、果たしてもこっちの腕前やいかに。 

 

 

 

 

 

 

 

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高校生として迎える最後の春休み、積みゲーを消化したのか手持ち無沙汰な様子のもこっち。

 

 

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初読の際は玄関で靴を履いているのが一瞬もこっちなのかと思ってしまい、「え、じゃあ手前にいるもこっちは……分身!?」などと思ってしまいましたが、タイトルを見た後なら父親であることが分かりますね。
そしてその父親の背中を見つめるもこっち。どうやら暇つぶしの目途は立ったようです。

 

……どうでもいいんですが、5時までには帰るという時間設定が家庭を持つ男ならではだなぁと思います。夕飯は家族揃って食べたいでしょうし。

 

 

 

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そして、父親の運転する車の向かう先は川でした。
川辺から景色を眺めるもこっち。後で語られますが、この川に昔もこっちは来たことがあるので、懐かしさに浸っているのかもしれません。

 

 

 

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そして釣り竿を受け取るもこっちでしたが、ちょっぴりグロい餌(ミールワーム?)には触れないようです。女の子ですからね(男でも苦手な人はもちろん居るでしょうが)。
かつては勇敢にもゴキブリと戦ったりセミの抜け殻を大量に集めたりしたもこっちですが、少々相性が悪い虫だったようです。

 

 

そして釣りに挑戦するもこっちでしたが……。

 

 

 

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連れてきてもらった手前口には出せないのでしょうが、あまりにも率直な感想です。
もこっちが普段嗜むゲームとは違い、常時能動的に動く趣味ではなく、魚が食いつくまでは待たねばならない、ある意味受動的な趣味ですからね。
私も子供の頃、一度釣りに連れて行ってもらったことがありますが、魚が一度食いついた時は息を荒げて大興奮したものの、それまでの時間を楽しむほど落ち着きは無かったことを思い出しました。

 

 

そしてもこっちの「暇だからお父さんについて来た」ことと、「昔 弟とお父さんと来た時はそれなりに楽しかった」ことを言及するモノローグが挟まれます。

 

 

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幼き頃のもこっちと智貴。目が全く同じです。
以前うっちーは「いやどう見ても(智貴はもこっちの)弟でしょ。遺伝子が一緒って感じするじゃん」と断言していましたが、このコマを見れば納得ですよね。

 

 

「引っかかった 引くからあみ!!」

 

 

手応えを感じ叫ぶもこっち、網を差し出す智貴。この頃の智貴はもこっちの事を純粋に好き(結婚したいぐらい)なだけあって連携取れてますね。
ですが、釣れた魚は……

 

 

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ゾンビ属性を付与されたグズグズの魚でした。
あまりにも強烈なフォルムで、ポーションを投げつけたらダメージを食らいそうです。

 

 

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智貴と父親との昔の思い出に浸るもこっち。
釣りを「全然おもしろくねえもの」ではなく「男の趣味=男なら面白いんだろう」と、自分がつまらないと分類したものに対して全否定しないのが地味に良いところです。
……そしてこの「幼いころの、家族との楽しかった思い出」に浸る横顔ですが……。

 

 

 

 

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喪102 [私モテWiki]において、子供の頃の夏休み、智貴とアニメを見ながらご飯を食べ、早く食べなさいと母親に叱られていた頃を思い出し、「楽しかったあの頃はもう返ってこない」郷愁を覚えた時の横顔と、ちょっと似ているように感じました。ただの偶然かもしれませんが、見つけた時にちょっとドキッとしてしまいました。
……いずれにせよ、もこっちにとって家族は間違いなく良い存在であり続け、過去を振り返るたびに遡りたい気持ちが蘇ってくるのは確かなのでしょうね。

 

 

そこで父親が口を開きます。

 


「智子と釣りするのいつぶりだ?」
「小2…小3ぶりかな?」
「智貴は中学生上がるまでついて来たけどな」
「女子は釣りしないからね」

 

 

どうやら父親も過去の思い出に浸っていたのは同じだったようです。
もこっちに中学生ぐらいまでは釣りに付き合って欲しかった思いがあるのでしょうか、智貴を引き合いに出します。
……それなら、今日来てくれたことは父親にとって非常に嬉しいものだったのでしょうね。

 


「もう3年だけど学校はどうだ?」
「どうって?」
「楽しいか?」

 

 

家族というとても近い存在であるにも関わらず、どこかぎこちなさを覚えるやり取りです。
ありきたりといえばありきたりな内容──「最近、調子はどう?」と、友人に聞くようなものに近いのかもしれません。
ですが、父親と娘となると少々話は変わると思います。
こういった父娘二人きりで改まった話し合いの時間が設けられる事は、実は日常生活の中ではあまり多くないのだと思います。毎日顔を合わせ、一緒の家に居るとしても、それが当たり前だからこそ、深い会話をしなくなるのかもしれません。


例えば、娘が反抗期を迎えれば父親に対して愛想が悪くなることなんて現実でも多々あるでしょうし、もこっちは父親に対して反抗的な感情は持っていないと思いますが、部屋に閉じこもってゲームばかりしていますからね。

だから釣りに来て、父と娘が二人きりで話し合う内容が「学校はどう?」なんてありきたりな内容なんですよ。普段それだけ、互いに干渉するような会話をしていないんです(そのことは、この後の台詞でも分かります)。だから釣りに来た今になって、そんな事を聞くんですよね。

 

 

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喪109 [私モテWiki]において、もこっちは大雪で午前授業で学校が終わってしまい帰宅した時、「行かなきゃ良かった とも思わないけど……」と口にしています。
「楽しくない」と、以前なら断言していたかもしれないもこっち。
「普通」という言葉は、(決して少なくはない)プラス、肯定的な感情が無ければ、決して出てこない言葉でしょう。あのもこっちが……と考えると、まるで奇跡のように感じます。

 

 

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ここで、父親はもこっちの事を気にかけていながらも、直接もこっちに聞くのではなく、母親とのやり取りでもこっちの様子を知っていたことが明かされます。
……「父と娘」の距離感の難しさを改めて感じます。

 

 

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「行かないでいいなら行かない」の言葉の後に「ただ」と接続詞を付け加えるもこっち。言葉のニュアンス的には、「3ヶ月ぐらいの色々」があるのなら、行かないでよくても行くと(無意識下かもしれませんが)心の何処かで思っていそうです。

 

恐らくこの3ヶ月間は、未来のもこっちにとって「楽しかった過去」「遡りたい過去」になり、思い出したその時に郷愁を覚えるのでしょう。

 

そしてもこっちは父親の釣った綺麗な魚を、自分が釣った風に見せるために持ち上げて写真撮影を行います。その目的は、

 

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友達に連絡するため。
その友達は、すぐ後で明かされます。

 


──そしてその時、もこっちの釣り竿に反応が!

 

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ゾンビ属性のクリーチャーがまた戦場に現れました。

 

 

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さりげないですが、自分のことを「腐ってる」と素直に受け入れられるもこっちは素敵ですよね。それも成長の現れなのかもしれません。
……そして、結局まともな魚を一匹も釣り上げることが出来ずに帰宅します。

 

「釣れなかったしつまらなかったろ」

 

車内での父親の言葉は、どこか予防線を張っているように感じます。
もこっちが自発的に「つまらなかった」と言った時、かなり父親としては辛いものがあるでしょう。
だからもこっちが「つまらない」と言いやすいように話題を振って、その流れで「つまらない」と言われたらダメージは少ない……というやつです。

 

 

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ですが、「普通」と返事するもこっち。
先程「学校は楽しいか」に対して返答したのと同じ、その字面よりも強いプラスのニュアンスが含まれた言葉です。

 

 

 

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父親の、これまで描写されなかったもこっちと智貴と同じ眼がミラーに映り込みます。ここで初めて描写することで、どこか家族としての繋がりが強調されているように感じました。

 


もこっちにとってはなんとなく来た釣りだったのでしょうが、きっと、今日は父親にとって最高の日だったんじゃないでしょうか。
気にかけている娘と同じ趣味の時間を過ごして、それがつまらないんじゃなくて「普通」と言ってもらえて、
そして普段はできなかった、何気ないようであまり踏み込めなかった部分の会話が出来たわけですから。

 

 

「ゆうちゃんにメール送って あっちはラインに送っとくか」

 

そして、最後のページでもこっちの「春休み連絡してなかったから送る」友達が明らかになります。

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どちらかと言えば、このもこっちはインスタグラムもこっちで……

 

 

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こっちはtwitterもこっちといったところでしょうか。

 

 

このシーンは、何故「ゆうちゃんに綺麗な魚の写真を送り、田村さんと真子には腐った魚の写真を送ったのか」でかなり読者の間で解釈が別れるのではないかと思いました。

私としては、まず田村さんと真子に腐った魚の写真を送った理由は「腐ってる奴同志惹かれ合ってる」という台詞に全てが集約されていると思っています。

 

 

 

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もこっちの田村さんに対する印象は、ホワイトデーの時にお返しを全く考慮に入れてなかった田村さんに対しての「こいつも友達いないだけあるな……」という台詞に如実に現れていると思います。

 

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一方の田村さんも、もこっちに対して「釣り銭パカパカしてそう」「(新成人が成人式で暴れるニュースで喜ぶもこっちは)ちょっと歪んでる」「ちょっとバカ」という印象を持っています。
だからこそお互いにそういった「腐った部分」をあまり隠していない印象があります。
(例えば、田村さんは、もこっちが南さんに「歯矯正すんぞ」と言った時に大笑いしました。一方のもこっちは、新成人のニュース然り、うんこ型チョコといい、田村さんの前で特別取り繕うような事はしておらず、自然体で接していると思います)

 

 

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一方、真子はかなり性格はまともですが、もこっちは「ガチレズ」と勘違いしていますし、田村さんに「レズ思い」を抱いている事も看破しています。

 

 

「腐ってる奴同志惹かれ合う」。どちらかというと、もこっちは真子よりも田村さんに対して友情を強く感じているとは思いますが、ありのままの自分(相手)というものを三人は少しずつ理解して、受け入れあって、惹かれ合っている。そんな二人に対しての、もこっちの好意的なメッセージなのだと私は思いました。

 

 

一方のゆうちゃんに対しては、その「腐っている」部分を隠している印象を受けます。
ただこれは、決してもこっちがゆうちゃんに対しての関心を失っただとか、田村さんと真子の方がゆうちゃんよりも優先度が高くなった、ということを示すわけではないと思います。

 

 

まず、今回魚の写真を撮り、メールの口実を作ろうとした相手は、元々は80%ぐらいゆうちゃんに対してのものだったと私は思っています。
何故なら、学校が離れ、ゆうちゃんとはコミュニケーション量が減少しています。最後に遊んでから既に間が開いている状態です。
(クラスが離れるかもしれないとはいえ)学校・学年が同じで自然に顔を合わせる可能性がある田村さんと真子よりも、ゆうちゃんと偶然出会う機会はほぼ皆無に等しく、放置していると関係が自然消滅しかねないのです。だからこそ、能動的にコミュニケーションをとる必要性が強いのはゆうちゃんの方なのかなと。
それに、腐った魚はきれいな魚を撮った後に偶然釣れたものですからね。

 

 

 

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また、もこっちは彼氏と別れてしまったゆうちゃんに対して「まあでも私はよかったけどね。これからはゆうちゃんと遊べる時間増えるし」と言っています。
この言葉はもこっちの自分都合で発せられているからこそ、ありきたりな慰めの言葉よりもゆうちゃんの心に響いたであろう、僕の大好きな台詞です。
もこっちにとってゆうちゃんは必要かつ大事な存在で、もっと一緒に遊びたいと思っている大切な親友なのだと言っていることを示していますし、せっかくの春休みなのですから、連絡を入れようとするのは自然なことのように思います。

 

 

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また以前、ゆうちゃんに対してもこっちは見栄を張って、自分をよく見せようと努力しています(空回りしていますが)。
これはゆうちゃんがビッチにリア充に変わってしまったコンプレックスに起因するものはあるのでしょうが、ゆうちゃんに対して「もこっちは凄いな」と思われたいという願望があるのだと思います。

 

 

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そして実際、ゆうちゃんはもこっちに対して「すごい」またはそれに準ずる、ポジティブ・尊敬的な感情を抱くシーンが何回かあります。

 


だからもこっちは、ゆうちゃんに対してはかっこつけたいんじゃないのかと思います。
「自分のことをよく見てもらいたい」「好意を抱いて欲しい」「醜い自分を見て呆れてほしくない」
……そのために見栄を張るのです。

 

ゆうちゃんに「もこっちってそんな人だったんだね……」と呆れられる。その事は、もこっちはかなり恐れているはずです。一方の田村さんには「釣り銭パカパカしてても私は付き合うよ」という態度を示してもらっているのだから、それなりの付き合い方が出来る。

もこっちは、田村さんとゆうちゃん、どちらに対してもかなり高い好感度を抱いていると思いますが、その性質が少し違うだけなのかなと。

 

もしかしたら、もこっちとゆうちゃんは、自分のことをよりよく見てもらいたいという男女間の関係に似ているのかもしれませんね(ゆうちゃんに対して無限にセクハラしてるとかそういう点は置いといて)。

 

 

 

……話が長くなってしまいましたが、私の解釈はこんな感じでした。

 

 

 


……余談ですが、このエピソードを読んで、家族とたまにはこういった時間を過ごす事の重要性を私は感じさせられました。私も両親と何処かに出かけて、一緒の時間を過ごして、「今こんな事してるんだ」と自発的に自分の話をしたりした方がいいのかな、と。
「学校の調子はどう?」「今どんな仕事してるの」という親の問いかけに対して、私は雑に返してきた人間なので、今回の話は胸に刺さるところが多かったです。