場末の。

ワタモテの感想記事がメインです。たまに他の話題を取り扱った記事も投稿します。

ワタモテレビュー喪131「帰るまでが遠足」

3月22日(木)に、待望の私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!の喪131「帰るまでが遠足」が公開されました!

 

 

www.ganganonline.com

 

 

……なるほど。そう来ましたか。
「帰るまでが遠足」
遠足の別視点、後日談等の番外編を描くにはこれ以上ないというぐらい「うまい」タイトルですよね。
いやはや、私は既に前回のエンディングが完璧すぎて帰宅した気分になっていました。一本取られたなあ。


……って、あれ?


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なんかサブタイトルに違和感があるんですよね。
なんかこう……パズルのピースが欠けているというか……橘さんが飲み込んだというか。
この違和感は一体なんなのでしょうか?

 

 


……あっ?

ああ……

 

 


ああああああ〜〜〜〜!?!?!?!?

 

 

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「モテないし」がない〜〜〜〜〜〜っっ!!!!!

 

 

……なるほど。恐らく消費者庁から「黒木智子って最近モテモテで表示と違うじゃねーか!」と措置命令が来たのでしょうね(※来ません)
いやはや、歴史的な瞬間ですよね。作品の一つのターニングポイント、と言ってもいいでしょう。
谷川ニコ先生も、まさか「モテないし」が外れる日が来るとは思っていなかったのではないでしょうか。
何やら感慨深いというか……言い尽くせない感情がこみ上がりますね。そうか、そういうステップに来たのかと。
12巻の帯には「モテ出した!?」の文字がありましたし……もこっちがモテているのはもはや我々読者の目からははっきりとわかっていることなのですが、改めてこういう風に、既存のフォーマットを変えるという大きなイベントで明示されると不思議な気持ちになりま

 

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……。

 

…………………………。

 

 

 

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先生っっ……!!!

 

谷川……ニコ先生っ……!!


またしても私を掌の上で踊らせてくれましたね……!!!!!!


(※まさに上の文章を書いている最中に谷川ニコ先生のツイートに気づきました。)

 


今二重に、言い尽くせない感情に襲われています。

 

 

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さて、今週のプレビュー画像は……絵の描ける安藤初芝くんです!!!
クラス替え回以来の登場となる初芝くんの視線の先には……もこっち達が!?

 

 

 

 

 

今回はオムニバス回です。
最初のエピソードのタイトルは「モブとサブキャラと主人公」。
……果たして、このタイトルが持つ意味とは一体何なのでしょうか。

 

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今回のわたモテは、何やらJKの集団をスマホで撮影する不穏な1コマからスタートします。同じグッズを付けて一体感を出そうとしている、ネモの言うところの「普通の女の子のグループ」の典型例のようですが……。

 

 

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……おや。どうやら不穏というわけではないようで、どうやら漫研部員達が資料撮影に没頭していただけのようですね。盗撮には変わりないですが……。
漫画を書く上において「自分で撮影した資料写真」は必須のようなものですから、まさにシャッター音がそこら中で鳴っていて、(観光スポット全体に言えることかもしれませんが)スマホを構えていても何とも思われないネズミーは資料の天国といったところでしょうか。
私も背景の資料がほしい時に道端でシャッター音を鳴らすのは気が引けるので、この「資料目的で撮影していても怪しまれないのが嬉しい」という感情は凄い分かるんですよね。ここ最近でも、コンビニの外観の写真が欲しくて撮影しに行った時に何回か気まずい思いをしたぐらいですよ……。その上人物の資料写真がほしいとなると、被写体が近くに居ることになるため更に難しいですよねえ。


そして漫研部員は資料写真が沢山集まったことにご満悦のようで、そろそろ遊びに行こうと声をかけます。せっかくの夢の国、楽しまない手はありませんからね。高校生は特に遊びたい盛りですから──

 

 

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……しかし! そこで仲間の誘いを断ってまで、ストイックに絵を描く練習をしようとする初芝くん。それには仲間も「まじかよ……」と驚愕した様子です。
遊ぶ時間があるなら模写に使いたいという情熱からか、それともリアルタイムで立体的に模写できる機会を逃したくないからか──いずれにせよ、絵に対するその熱意は並々ならぬものでしょう。周りからの視線も気にせず、初芝くんは迸る情熱を鉛筆に載せ、真っ白なノートに思いの丈をぶつけます。

 

 

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……そういえば、初芝くんの描く似顔絵と言えばハンコ絵でしたね。もこっちの似顔絵を描いたシーンでは「急いでいるので」ということを理由にして、モブキャラと「同じ顔」で簡単に仕上げていました。
それを見た漫研の先輩は最初は苦言を呈しつつも「うーん まあいいか…どうでもいい(モブ)キャラだし……」と一言入れていましたね。
さて、一体どんな出来になっているのでしょう。リアルタイムで描く……しかもその被写体の人間が動いているとなると、静止画だった前回よりも難易度は遥かに高いです。もしかしたら、以前と変わらぬハンコ絵なんじゃあ──

 

 

 

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……!?
画力がとんでもないことになってる……!!

 

人物はしっかりと書き分け出来ている上に表情まではっきりと描き出せていますし、よくありがちな「人物は描けるけど背景が描けない」タイプでもありません。建造物の模写までバッチリではないですか!パンダやっぱキモくね?おらー!!


……作品中で初芝くんの努力している姿は描かれはしませんでしたが、論より証拠。初芝くんの描いた絵が、2年間のひたむきな努力を如実に示してくれましたね。
仲間の誘いを断り、絶好の生の資料を逃さない熱意は決して一時的なものではなく、ずっと途切れること無く続けてきたものなのだということが分かります。


……そんな初芝くんの目の前を通りがかったのは我らがもこっちグループ。
もこっちの顔を見た初芝くん、(あの女子………どこかで…)と記憶がフラッシュバックし、一年生の時に似顔絵をモブ顔で仕上げた女子だということを思い出します。

 

 

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もこっちはどうやら、初芝くんの心の中で自分が描くことを逃げてしまった象徴として記憶に残っていたようです。つまり、「急いでいるんで」と言いもこっちの顔をモブ顔で仕上げたのは、被写体をうまく描く自信がない事による逃避、言い訳だったのですね。


ですが、あれから2年……たゆまぬ努力を続けてきた初芝くんは、自分の過去の弱さを素直に見つめ、受け入れられるほどに成長を遂げていました。そして、今の確かな実力でもう一度もこっちの似顔絵に挑戦することで、その苦い思い出を「今の自信のある自分」で上書こうとします。

 

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そして仕上がった絵は……まさにもこっち!! これはアベンジャーズのシーンですね、間違いない。
初芝くん、もこっちからは「絵の描ける安藤」と呼ばれていましたが、「可能」の描ける(can draw)ではなく「優れている」意味での描ける(good at drawing)になっていたんですね。
何かを創作することであがいたことのある人ならば……そして多くの挫折を経験したことがある方ならば、彼の成長に何か思う所があるのではないでしょうか。初芝くん……すげえよアンタ……。

 

……そして、もこっちがモブ顔でなく、はっきりと顔が事細かく描かれたことには大きな意味があります。

喪9 [私モテWiki]のエピソードは、1年生の頃のもこっちが「モブ顔」で初芝くんに描かれる事で、作中世界の人間(初芝くん)からもこっちが「どうでもいい(モブ)」と思われている事を暗示するような内容になっていました。(最後の初芝くんの先輩の台詞がそれです)。

ですが、3年生になった今、改めて初芝くんがもこっちを正確に、そして美しく模写したことは、作中世界の人間にとってどうでもいい(モブ)キャラではなく、主役級の存在……皆から必要とされる存在になった、まさに名実ともに主人公の格を得た(昇格した)ことを暗示しているのです。
このエピソードのタイトルが「モブとサブキャラと主人公」であることも踏まえると、より一層そうなのではないかと思います。

 

……おっと、それではまだ「サブキャラ」が残ってしまいますね。

そんな訳で、一瞬通りすがっただけにも関わらず他のメンバーまでデッサンしようとする初芝くん。写真記憶の持ち主なのかと思うぐらい凄いスキルです。どれだけの模写を重ねてきたのでしょうか。
ですが流石に記憶量にも限界があったようで、一人の顔しか覚えられていなかったようです(それでもすごい)。果たして一体どのような絵に仕上がるのでしょうか?

 

 

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なんか伝染(うつ)ってる──!!!!

 


「さっぱりした奴」と吉田さんに言われているだけあって、他の作中世界の人間からも非常に覚えやすい顔なのでしょうね。
……にしてもこのイラスト、うっちーが禁術・多重影分身の術を使用したシーンと言われれば納得してしまいそうですね……(普段から忍者みたいなことをしているため)

 

……さて、なんだかんだでギャグで落とし込む手腕は流石谷川ニコ先生ですが、初芝くんの成長は感動的なものがありますね。

 

そんな初芝くんの横を通りすがるのは南さん
「ねーまこっちー 私も耳ほしいー」と真子の耳を触ろうとしながら笑顔を零します。
……どうやら先程の涙とは一転、真子が来てくれたことで気分が180度変わったようですね。それと同時に、アベンジャーズのシーンから真子と南さんの合流のシーンまでの間は相当時間が空いていた筈ですから、数時間以上に渡ってずっと初芝くんは絵を描いていたことが分かりますね……(すごすぎる)。
真子も元気を取り戻した南さんを見てほっとした様子ですが……。

 

 

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ま…… 

 

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……いえ、分かるんですよ。何故なら人間というのはそんなに簡単に変わらないものですから、例えばこのシーンで初芝くんを見た南さんが初芝くんの行動に理解を示す、或いはその姿勢を示そうとするとなれば、それはかなりの違和感を生むと思います。
そして初芝くんの行動は、確かに世の軽薄な人からすれば笑われるような行動かもしれません。確かにネズミーでこの行動はかなり浮くと思います。
この南さんの発言は、まさに生々しい人間らしさがあって非常にリアルです。


……ですが、今や自分の尻に火がついている状況(真子がいなくなったらぼっち)であるにも関わらずこの上から目線……自分の現状を省みた発言とは到底思えないですし、何が原因で自分から友人知人が離れていっているのかを全く理解できていないことが明らかです。厳しい言い方をするならあまりにも愚かでは……。(それが実に南さんらしいのかもしれませんが)
それに初芝くんは「誘いを断る」という選択肢を取った時に「飽きたら連絡してこいよ」と言ってくれる友達が最低でも二人居るんですから、南さんよりも幸せな友人関係を築けていると思います。今の南さんは、誰にでも優しい真子と加藤さんが情けをかけて声を掛けている状況なのですから、戸愚呂弟の言葉を借りるなら「いまのおまえに足りないものがある 危機感だ」って感じですよね……


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それに、今此処に真子が居るのは田村さんの優しさがあってこそだということを考えると、それを無碍にされた気がしてなんだかなぁという気持ちになりますね……。(南さんにとっては「知らねーよ」な話でしょうが)

 

 

「で…でもすごく上手かったね」とフォローを入れる真子に対し、南さんは初芝くんが同じクラスである&自分の悪口が聞こえて睨まれていると思い、急に慌てて逃げ出します。聞こえたことが分かったら逃げ出すとかどこまでも行動が小物過ぎる……! 作品のキャラクター、人間らしさという意味では南さんはブレなくて生き生きしてますよね(人間性への好感は抱きませんが、キャラクター像としての好感は少し抱きます)そんな南さんを見ながら真子は(どうしたらいい子になるんだろう……)と困り果てた様子です。娘が反抗期に差し掛かった母親の心境でしょうか。
……そういえば初芝くんは被写体を見る時、真剣になるせいか睨みつける癖がありましたね(もこっちもそれでびびってました)。本当に睨んでいたかどうかは定かではありませんが、初芝くんは一連のやり取りを受けて一枚の絵を仕上げたようです。

 

 

 

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マコサイコじゃねーか……


「みみ気に入った?」という言葉が実にサイコ染みているというか、アルティメットナチュラルサディスティックな感じがして笑いを誘います。
「私も耳欲しい」「どうしたらいい子になるんだろう」の二つに対する答えが一つの絵に籠められている力作ですね。どうやら会話内容は一から十までバッチリ聞こえていたようです。
絵の内容は実にアレな感じですが、怒りを創作の方向に昇華させる事ができる初芝くんは作中の登場人物の中でもトップレベルで防衛機制のレベルが高そうですね。
……それにしても、普段まともな分真子はガチレズだったりサイコだったりの方向でいじられるのは運命なんでしょうか。(それがまた凄い面白い)なんか非常にネタのされ方が二次創作そのもののようで、「こんなの……こんなの同人誌かよ……」という(肯定的な)感想を抱きました。
後南さんに対する処置としては、真子が優しすぎるぶんあながち(方向性が)間違ってないように感じます。やりすぎですけど。

 

 

二つ目のエピソードのタイトルは「つながり」

 

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シーンとしては前回のラスト、花火を見上げるもこっち一行のシーンからスタートです。
空を彩る鮮やかな色々が全員を照らす中……いよいようっちーにも夢から醒めなければならない瞬間が訪れます。


「うっち──!! どこ────!?」


恐らくは保護者である宮崎さん辺りでしょうか、呼びかける声が周囲に響き渡ります。この子らいっつも心配してくれてますね……。
うっちーは意図的にはぐれて無理してもこっちの隣に駆けつけた立場……
既に何度も雌猫グループの面々には心配を掛けてしまったうっちー、冷や汗を流しながら(そろそろ戻らないと……)ともこっちに背中を向けます。
……が! そのうっちーの背中に声を掛けて呼び止めたのは、なんともこっちでした。
どうやらもこっちには何か考えがあるようで……。

 

 

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……おお! もこっちの中で『お返ししなきゃな』という気持ちがあったようですね。ちょうど手元に牛のストックも出来たことだし……という事なのでしょうか。
そういえばもこっちの言うとおり、チョコレートといい、白い恋人といい……今までうっちーには何度かプレゼントを貰っていましたし……

 

 

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過去に真子からチョコを貰っているにも関わらずお返ししなかった田村さんに対して(こいつも友達いないだけあるな……)と内心呆れるなど、善意には善意で返したいというもこっちの根の部分の良さがなんとなく伝わってきますよね。
さて、うっちーからすればまさに瓢箪から駒……望外の思いもよらないラッキーイベントだったでしょう。良かったですね、う──

 

 

 

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一輪の大きな花が咲く──

 

 

ええ、夜空に咲いたそれは嘸かし大きく、綺麗な花火だったことでしょう。
ただそれは敢えて描写されていないのです。
何故ならこのうっちーが受けた衝撃の度合いというものが、「もこっちから何かプレゼントされる」ことと「擬音」すべてで事足りているからですね。
読者は見ることもなく空に大きな花火が打ち上げられた事を理解しますし、またうっちーが受けた衝撃の大きさも理解することが出来る。
……今回の一番印象的な一コマですね。

 

 

そして次のシーンでは、先程の賑やかな夜空が嘘のように一転し、穏やかな青色の空が広がります。
静寂、そして黄昏。
穏やかに、そして風のゆくままに漂う雲──うっちーは頬杖をつきながら、窓ガラスのそれを眺めます……言うのも野暮な話ですが、先程から空の情景とうっちーの心はリンクしています。

 

あれだけ遊園地で慌ただしく動き回っていたのが嘘のように、今はただ空をじっと見つめるだけ。
宮崎さんはそんな珍しい様子のうっちーが気になったのか声を掛けます。

「最近休み時間はいつもどこか行ってたけど今日は良いの?」
「もう必要ないと思ったから」

 

 

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……急にJ-POPのようなリリックを紡ぎ始めるうっちー。
西野カナの作詞した歌詞に「どんなに離れても空は繋がってる」というものがありますが、つまりはそういうことなのでしょうか。
その歌詞が炸裂したコマでは、鞄に付けられた確かな繋がり──「三牛士」のキーホルダーが描かれています。
この確かなモノがある限り、会いたくて震えることも……ましてやへばりついたりライン移動したりする必要はないんです。
遂にうっちーは本当の意味で背景芸から卒業する瞬間がやってきたという事なんですね。
いやはや、感慨深いですよ本当に……っていうか「いつも」休み時間はもこっちを見てたのか……(困惑)


ただ、ただでさえ国語の成績は卓越して高いと推測されるうっちー(「蠱惑」という単語をスラスラ出せるJK)。詩人の魂のリリックは一般人には難しいものがあったのか、宮崎さんにはその言葉の真意が伝わらなかったようです。

 

そんな中、加藤さんが借りた英和辞典をそばかすの女の子に返しに雌猫グループの居る3-4にやってきます。
何気なしに加藤さん視線を向けるうっちーでしたが……。

 

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加藤さんの上着のポケットからはみ出る三牛士キーホルダー──うっちーと同じミルクタイプです。
うっちーの脳裏には一抹の不安がよぎったに違いありません。
まさか、加藤さんも黒木(あいつ)から貰ったのではないか──と。
ですが、偶然お土産がかぶることもありえます──その是非を問いただすため、そばかすの子の横まで瞬間移動してそれを指摘します。
すると……。

 

 

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↑うっちーの三倍の戦闘力

 

 

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↑加藤さんの三倍三牛士をもろに食らってしまいこの表情

 

ああ……なんと世の中は残酷なのでしょうか。
気になるキモいあいつからの私だけへのプレゼントというのは幻想で……
しかも、それを三倍貰っている人間が居るなんて……。
しかも最初見えていたキーホルダーが自分と同じ種類のもので、指摘してから別種類含むコンプリートセットが出てくるという残酷さ。

 
まだ他の人にもあげていたという事実だけなら口元が△になるだけでなんとかなったかもしれませんが、加藤さんの圧倒的戦闘力を見せつけられた今、うっちーは格ゲーで言うピヨピヨ──つまりは放心状態に陥り「この前の遠足の帰りに電車で黒木さんが……」という説明も聞こえなくなってしまいます。

 

 

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あれだけ近くにいるように感じられた青空に映るあいつの影も、今は流れる雲のようにゆっくりと遠ざかっていき……また、離れていったあいつの影を追いかけ回す日々が続くのでしょう……(上下のコマで雲が結構移動しているので、時間経過がそれなりにあった=本当にゆっくりと離れていったことが分かる)

 

 

そして、三つ目……最後のエピソードのタイトルは「のめりこむ」。

 

 

電車の揺れ……一定のリズムで静かな音を刻み、身体へ適度に振動を与えるそれは、赤子を眠りへと誘う揺りかごのような力を時折持つのかもしれません。
ガタンゴトンと揺れるそれに合わせて首を左右に振るのは、我らがもこっち。
その両隣には耳をまだ付けている加藤さんと岡田さんの姿が。……なんだか、この二人に挟まれている光景って珍しいですね。岡田さんとの絡みはこの遠足編から始まったようなものなので当然かもしれませんが。
岡田さんは正面のつり革を掴むネモのグッズを触りながら会話する中、加藤さんはその眠たげな様子のもこっちを優しい表情で見つめています。
やがて耐えきれなくなったのか、もこっちの視界は次第に狭まっていき、電車の揺れる音も何処か遠くへと……。

 

「黒木さん」

 

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そしてもこっちが目覚めた時には──加藤さんの膝枕で眠るというとんでもないVIP待遇「わたしも同行する」「か、花京院…」
もうそろそろ着くということもあり、加藤さんも耳を外していますね。ひょっとしたら結構長時間に渡って加藤さんはもこっちを膝枕していたのかもしれません。
それに、加藤さんの膝の上にはきらりと光るが……。

 


黒木大好き集団の面々には昆虫にとっての樹液、蜂にとっての花蜜のような魅力があるのかもしれませんが、通常であれば衛生的に汚いだけのそれ……
(うあああ!?最悪だ!!最後の最後でやらかしたー)と、眠りも一瞬で覚めるほどのパニック状態に陥るもこっち。
「今… すぐふくんで ご ごめんなさい」と平謝りするもこっち。
ここ最近はどちらかというと周囲の奇行に巻き込まれるか淡々と見つめることの多かったもこっち、ここまで取り乱す姿は久々な気がしますね。

が……なんと、そんなもこっちに掛けられた言葉は「ん? 大丈夫だよ」というなんでもないような言葉。
……け、決して短い時間では無かったはずですよ?
涎だけでの問題では決してありませんし……というかそれをずっと拭かずにいたのはもこっちを万が一にでも起こさぬようにという配慮……?
それに膝枕というのもする方は結構重いはずですし、いやまさか……いくら加藤さんが聖女だとしてもそれは……

 

 

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いやこれ聖女じゃん……

 

 

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以前、クラスの打ち上げのときに加藤さんのことを「お母さん」と称したもこっち。
恐らくは子供へ無償の愛(対価を求めぬ優しさ)を別け隔てなく振りまくようなその姿から連想した言葉なのでしょうが、続けて連想したのは「No.1」。無機質な車内を高級クラブの装飾に幻視するほどの圧倒的な加藤さんの優しさにもこっちは汗がダラダラです。
……そのNo.1というのはいわゆる「お客様からの対価(金)」が前提にあってこそのものなのでしょうが、加藤さんの場合はただ同じクラスメートというだけなのですから、見返りや対価なんて望んでいる訳ではないのでしょう……いやはや、いかに加藤さんが稀有な存在かが分かりますね。
このNo.1という形容は、喪130で加藤さんに三牛士のキーホルダーを手渡した際(キャバ嬢やアイドルに貢ぐ理由が少しだけわかった……)と言っていたもこっちでしたが……

 

 

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銀座高級クラブ「明日香」への貢ぎが止まらなくなるもこっち。

相手が相当の美人である、というだけでもビクビクしてしまうでしょうに、その美人に更に優しくされたとなるとイチコロな心理……分かってしまいますね。もこっちが半分パニック状態に陥っているのは表情からも明らかです(当然なことですが、美人から優しくされることに慣れていないんでしょう)。
田村さんはその「三つ受け取って欲しい」というもこっちの所作に意外そうな表情を見せます。
……どうやら、本当に対価を求めていないようですね。こういうのを「裏のない優しさ」というのでしょうか。加藤さん、ここまで優しいと男子に勘違いされることも多そうで大変そうですね……。

 

 

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朗らかな笑みでもこっちからの申し出を断る加藤さん。ですがどうしても、と食い下がるもこっちに「2つ貰おうかな それで1つになるんでしょ」と間を取ります。好意を無碍にするわけにもいかない、というやつですね。
もこっちの方から食い下がってまでプレゼントを渡したがるのも滅多にないことですよね。
「セコい」と思われてしまうような口実を使ってまでキーホルダーを貰った人の目もそりゃあ死にますよね。
一方、田村さんの表情がどことなく「おや」というような……もこっちの様子を珍しがるような表情にも見えるのは加藤さんと同じく「もこっちから自発的に貰った」側だからでしょうか(ネモと立場が違う)。ネモの表情は余りにも分かりやすすぎて面白い(怖い)んですが、田村さんはこの時何を考えていたのが想像するのが楽しいです。

 


それにしても、先程も述べましたが加藤さんの優しさには本当に裏表がなさそうなんですよね。

 

 

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例えばこのシーン(もこっちから三倍貰う前)では別のアクセサリーを付けていたのに、わざわざそれを取り替えてもこっちの三牛士キーホルダーを付けたのですから、加藤さんが本心からもこっちのプレゼントを喜んだことが分かります。こういう細かい部分まではなかなか人はお世辞だけでは変えられないものですからね。
それにあのストラップは決して高級だとかそういう訳ではありませんし、作中の登場人物は軒並み「もこっちから貰った」という事に対して価値を感じている訳ですからね。
……ひょっとしたら、もこっちは加藤さんが自分の貢いだものを付けてくれるのを見てまたクラスで歓喜に震えるんでしょうか……完全に客と嬢の関係になっちゃいますねこれ。

 

いや……それにしても加藤さんには欠点がありませんね。もこっちの中で明確に好感度が跳ね上がっている描写のなされた数少ないキャラクターの一人になりました。
あんな事があった後の南さんへフォローを入れるところを見ると、本当に誰へでも分け隔てなく優しいんでしょうし……。いやはや、末恐ろしいです。もこっちの隣争奪レースというものがもし存在するのなら、加藤さんはラスボス級の存在感を持って一気に現れたという感じですよね。このエピソードはかなり加藤さんの強烈な存在感、聖母っぷりを読者の中にも強く植え付けたのではないかな、と思いました。
後は、もし描写されるのであれば、もこっちが明確に好意を示しているゆうちゃんに対してもこっちがどれだけ三牛士をあげるのか……或いは他の何かをプレゼントするのかが気になります。
問題は数とかではなく気持ちだとは思うんですけれどね。

 

それにしても、加藤さんがもこっちに対してどれほどの好感度を抱いているのかが見えないんですよね(誰にでも優しいとなると違いが見えない)。
それでも、涎をこぼしても嫌な顔ひとつしないのは流石にもこっちに対してそれなりの好感度が無ければ起こりえないことだと思いますので、やはり自分がどれだけ配慮しても直せなかった岡田さんとネモの関係をあっという間に修復したことが大きかったのでしょうか(もっと細かいことを言うと、喪109で本を紹介したとかありますが)。
喪106ではもこっちの目の大きさに注目し、メイクを施して「凄い可愛くなった」と言っていましたが、今思えばそれも世辞ではなかったんでしょう(ネモは笑ってましたが)。身長差もだいぶんありますから、もこっちに対して小動物的な可愛さを感じているのかもしれませんね。

 

……さて、今回のエピソードの主役は、間違いなく初芝くん、うっちー、加藤さんの三人でしたね。
個人的には初芝くんの出番があったこと……そして初芝くんが凄くいい形で成長していたことが一番嬉しかったですね。たった数ページのエピソードで、キャラクターの見る目が大きく変わってしまうほどのインパクトを与えてくれるのがワタモテのいいところだな、と改めて再認識させられました。

 

それでは次回の更新は2週間後です。またお会いしましょう!