場末の。

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ワタモテレビュー喪136「モテないし漫画を薦める」

6月21日(木)に、待望の私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!の喪136「モテないし漫画を薦める」が公開されました!

 

 

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一ヶ月……待つには長い時間でしたが、過ぎ去ってみればあっという間だったようにも感じてしまいますね。
単行本最新刊13巻も7月21日発売と、残り一ヶ月を切りました。
思えばワタモテの更新日や発売日基準で時間の流れを実感しているような気もしてきました……。


さて、今回のエピソードのタイトルは「モテないし漫画を勧める」
私にとっての人に勧めたい漫画ランキング第一位であるワタモテでこのサブタイトルとは…。

 

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今回のプレビュー画像は漫画を勧められる真子もこっち、そして田村さん
一冊の漫画が、意図せずして田村さんの心を解きほぐす事に……?

 

 

 

 

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もこっち、親友のゆうちゃんに一冊の漫画を貸していたようです。
喪109「モテないし雪の日の学校」では、「自分の好きな小説」に限らず、「相手が好きそうな小説」を選んでいた(加藤さんに対して「ケーキ王子の名推理」を選択)もこっち。
今回のエピソードでもゆうちゃん好みの一冊を見事に選ぶことが出来たようです。
今回は勧める本と自分の好きな本が合致していたのか、「これに関しては泣けた」「久々誰かに読ませたいと思った」と絶賛するもこっち。
そんな事を隣で言われたら自分も読みたくなるのが自然であり、小宮山さんもその例外では無かったのですが……。

 

 

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貸す流れを平然と蹴るもこっち。


さ、作者の売上に貢献したかったんですよね! そうですよね! 変態には私物を貸したくないとかそういう辛辣な理由じゃないことを祈ってますよ私は!

 

 

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「ガチレズさん」の流れを引きずっているのか、真子のことを「真子さん」と呼ぶもこっち。若干吹き出しは震えている(声)が、フォントまでは揺れていない

 

そして翌日。(一般人のゆうちゃんでいけたし大丈夫だろ)と、以前漫画を貸してくれたお返しとして真子に件の漫画を貸し出します。
この場合の「一般人」は恐らく「オタク(である自分)」との対義で使っていると思うのですが、高校デビュー以後のゆうちゃんはやはりもこっちにとっては一般人枠ということなのでしょうか。(中学時代はオタク友達でしたが。)

 

そして食い入るようにその本を読む真子。田村さんも頬杖をつきながら本を読む真子の様子を伺いますが、突然立ち上がり何処かへ向かってしまいます。
一方、すっかり関係の修復したタレ目さんと麗奈さんと一旦別れた吉田さんは中庭で口元を抑える真子を見つけます。
「田中?」とどこか様子のおかしい真子に声をかける吉田さんでしたが……。

 

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!?

 

ページを捲ったら真子のとんでもなく可愛い乙女の泣き顔が突然出てきたので初読時にぶったまげました。
何か深刻な事態が起きているのかと「おい!!どうした!!」と声を荒げる吉田さんでしたが、話を聞いてみれば漫画で感動して泣いてしまったのだと知ります。
もこっちから借りたという経緯を知り、「ふーん…」と表情を変えぬままその漫画をペラペラと捲る吉田さん。
すると、その捲ったページの何処かが気になったのか…或いは真子が泣いたぐらいの出来だからか、「私が黒木(あいつ)に返しとくからちょっと借りていいか?」と口にします。

 

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吉田さんの表情は描写されませんが、深く読み込んでいる事が分かる一コマ

 

そして時刻は過ぎ、放課後。
帰宅のためにカバンを背負ったもこっちは、真子から例の漫画を吉田さんへ又貸ししたことを伝えます。
ですがこれまで築き上げてきた四人の友情──互いの間には信頼と絆があります。ちょっとの又貸しぐらいなら全然問題は無さそうですよね。

 

 

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おい。

ヤンキー嫌いの黒木姉弟の血が騒ぐのか、もはや偏見はちょっとやそっとでは改善されなさそうです。

 

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そんなもこっちに声を掛けたのは吉田さん。普段どおりの口調、くずした格好。
ですが、鼻の色だけは普段と違うことに気づいたもこっち。


微笑みを湛えながら吉田さんを見つめる真子(よしまこ来てる……)
もこっちは激しく声を震わせて汗を流しながらも、口元に笑みを浮かべながら「い… いや」「な 泣いたのかなって」と吉田さんに声を掛けます。
それに対して「あぁ!?」と声を荒げる吉田さんでしたが……。

 

 

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このコマの吉田さんがあり得ないぐらい美人でまた救急車騒動になるところでしたよね……。
「漫画で感動して泣いた」という、ヤンキーとしても、もこっち相手という意味でも少し認めにくいような事も素直に認めるのが吉田さんらしいですよね。

 

真子「なんかよかったよね なんかやさしい話だった」
吉田さん「けど死ぬのはなしだよな」
もこっち「い…いや 死ぬけど安易な死ではないというか…」(吹き出しが少し震えている)

 

「共通の好きになった漫画で語り合う」という幸せな会話を三人が行う中……田村さんはそれを外から見つめていました。

 

 

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ここのもこっちがかなり美人

 

そして帰路。吉田さんと真子が談笑する後ろで、静かな時間を過ごす二人。
田村さんの口からふと溢れたのは「……黒木さん さっきの漫画借りていい?」という、これまた真子が驚きそうな質問でした。

 

 

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「クズとメガネと文学少女(偽)」のコラボ4コマでは「漫画あまり読まないから」と言っていた田村さん。
恐らくその漫画に興味があるというよりは、三人が絶賛するそれを──つまりは感動を共有したくなったのでしょう。


そして田村さんはその感動大作を家に帰って目を通しますが、その表情は崩れず。
日が明けて登校した直後にも目を通しますが……

 

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学校に来てまで本を読んだのは中断した続きを読むためではなく、何度も何度も読み返すため。恐らく、昨日だけでも十回以上読み返しているのでしょう。
田村さんがそこまでしてその作品を読み返す理由は……。

 

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「自分が黒木さんや真子や吉田さんと違う」という事が嫌だったから。これに尽きるでしょう。
何度も読み返し、読み返し、それでも全く動かない自分の心に焦燥感すら抱いていたかもしれません。

 

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これまでの田村さんの言動──「黒木さんや私と違って」という台詞や、「私と違ってこういうことできる人なんだ」という台詞から、「自分と同じ感性を抱いていて欲しい」という望みと、その裏返しとして「同じ輪の中に居る人間が自分(の感性)と違うこと」に対して極度の恐れを抱いていることが分かります。
だからこそ、なんとしてでも自分も同じ感動を味わい、「自分も同じなんだ」と落ち着きたかったのです。
ですがその願いは叶わず……「私も昨日同じの買っちゃった」と屈託のない笑みを見せる真子を見た田村さんの表情が曇ります。

 

すると、そこに現れたのは登校してきた南さん。 真子も南さんにこの作品の面白さを知ってほしいのか、「これ面白いから南さんに読んでほしいんだ」と本を手渡します。 南さんは笑顔でそれを受け取り、目を通し始めるのですが……。

 

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まさかの不評。
続けて「これ主人公陰キャラじゃん キモい」とバッサリ切り捨ててしまいます。


……食べ物に好き嫌いがあるように、作品にも好き嫌いがあるのは当然のことです。
主人公に自己投影できるかどうかは作品を楽しめる大きな肝となる部分ですが、「感動しなかった?」と問いかける真子に対して南さんは背もたれに肘をついて首を傾げます。

(ダメだ…! どうしたらいい子に…!)

この作品に感動できるほどの素直な感性を持って欲しい──そういう意味合いでのモノローグだったのかもしれませんが……

 

 

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「これ」呼ばわりされる南さん。

 

なにやら最近の谷川ニコ先生の南さんの扱い方が絶妙なように感じます。

 

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他人のことも分かることができないし、自分のことを分かってもらえないという恐怖。
田村さんは輪の中から切り離される孤独を恐れているのでしょう。
一緒に感情を共有できないという苦しみが、田村さんの中で強迫観念のように襲いかかっているのかもしれません。それは恐らく、孤独を招く要因となるものだからです。
すると、そんな田村さんを見かけたもこっちが、ふととある言葉をかけます。

 

 

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それつまんなかったでしょ?

 

この本を楽しんでいたはずの黒木さんからの予想外の言葉に、田村さんは言葉を失います。続けてもこっちが紡ぐ言葉は──

 

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……もこっちは、田村さんが恐らくこの本を楽しめない事を理解していました。

「誰も私のことをわからないんだ」

と一度は絶望し、落胆した田村さん。その田村さんの手をいとも容易く引っ張り上げたのは、他ならぬ我らが主人公──もこっちだったのです。

 

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思えば、コワリィッチで「黒木さんは私と違ってこういうこと(リア充的なノリに乗る)が出来る人なんだ」と落胆した田村さんの心をすぐに救ったのももこっちでした。
思えば三年生編から、孤独に苛まれそうになる田村さんの心を理解し、要所要所で一番助けてきたのはもこっちなのかもしれません。

 

そしてこのもこっちの言葉には、「別に同じでなくていい」ということを田村さんに実感させたことでしょう。
好きなものが一緒でなくていい。
同じものに感動できなくてもいい。
ただ、自分を理解してくれる友人がいれば、それで救われるのです。

 
すると、その言葉を聞いた田村さんの変化に、「あれ?」「意外とよかった?」と驚くもこっち。
何故なら──

 

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どうやら田村さんの心に一番響いたのは、感動的な物語よりも、友人の優しい言葉だったようですね。

 

 

……いやはや。今回の話はとても良かったです。心に染みるものがありました。
どこか二年生三学期の頃の田村さんを彷彿とさせる弱々しさ。
そしてそれに手を差し伸べるもこっち。そうッ!ういうゆりもこが見たかったァァァァ!!
きっともこっちは自然体で……それこそ特別な事なんて何も意識せずに掛けた言葉なのでしょうが、それが一番ありがたかったりするんですよね。

誰も自分のことなんて分かってくれない──そう絶望した瞬間に理解してくれる言葉をかけてくれる友人なんて、そうそう巡り会えないものですよね。
ひょっとしたら田村さんはかけがえのない友人、人生の財産を手に入れたのかもしれませんね。

 

今回は短いページ数で、どことなく情緒を感じる吹き出しなしのコマが多く、読む速度は早かったのですが、1コマの情報量なんて関係ないな、と改めて思わされました。本当に強く心に残る、後味の良い回でした。
こういう話、また読みたいですね。田村さんともこっちの魅力が相乗効果で本当によく出ていた回だと思います。

 

それでは次回の更新は二週間後──またお会いしましょう!