場末の。

ワタモテの感想記事がメインです。たまに他の話題を取り扱った記事も投稿します。

ワタモテレビュー喪134「モテないし周りは騒がしい」

5月10日(木)に、待望の私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!の喪134「モテないし周りは騒がしい」が公開されました!

 

 

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……。
今回のエピソードを読んだ時に、ええ。その、あれですよね。
大気圏外まで吹き飛んでしまった、というべきですかね……。
あまりにも莫大な情報量が塊となって物凄い勢いで噴射され、それに直撃してしまったのです。そりゃあ、地球も脱出してしまいます。
本当に読んだ後の数時間というのは、文字通り「地に足がつかない」といったような、落ち着かない心境で過ごさざるを得ませんでした……。


普段から圧倒的情報量を1コマ1コマに詰め込んでくるワタモテですけれども、今回のエピソードは突出して情報量が多いという印象を受けました。最初読んだ時は脳の処理が追いつかず、混乱してしまったぐらいです。
登場キャラクターが多い事もその一因ですが、一番の理由としては、決して長くはない──いえ、寧ろかなり短いページ数の中で、そのキャラクター一人一人が強い個性を発揮しているからではないでしょうか。
今回のエピソードでは「それぞれのキャラクターが各々の意思に基づいて、同じ一つの空間に居ながらも自由に動いている」ように感じられました。だからこそあれほどの情報量が詰め込まれているのかな、と。
そして、それでいて短いページ数に纏めるというのはかなり大変なことだと思うのです(作者の制御下に置けなくなった場合話に収拾がつかなくなる)が……谷川ニコ先生の手腕には本当に恐れ入るばかりです。たった一人の作者が、これだけ多くのキャラクターを同時に動かす、或いは制御する……というのは本当に大変な労力を要することですから。

 

 

さて、そろそろ本題に入るとしましょう。

 

 

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今回のプレビュー画像はこみっ……
……

あれ!?
前回で綺麗にオチたと思ったのですが、仁義なき戦いはまだ終わらないんですね!?
というかイチャってるってどういうことなんです!?

 

 

 

 

 

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今回の扉絵は……これまた、言及する所が随分と多いですよ。
「学食では大事件が。」
前回、幕張の狂犬と幕張のネズミーの血で血を洗う抗争の火蓋が切られたばかりですが、それとは対照的に教室では穏やかな時間が流れているようです。
加藤さんと向かい合って食事をとっているのは3−4所属のそばかすの女の子であり、直近では喪131で加藤さんが英和辞典を返しに行ったシーンで登場しましたね。
(となると、この扉絵だけではこの教室が3−4か3−5か判断しづらいのですが、次ページでこの教室が3−5だと分かる加藤さんの自然な台詞があります)

 

また、加藤さんの付けていた三牛士ストラップが元々付けていたものに戻っています。

 

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加藤さんが事情を知らない以上、うっちーに忖度したという事は無いとは思いますが、ひょっとしたら元々付けていたこのストラップも、実は加藤さんにとっては思い入れのあるものなのかもしれませんね。もしくは日によってローテーションさせている可能性も考えられます。

 

 


そしてその奥では……

 

 

……。
あっ……
ぶ……ぶ……

 

 

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豚の餌さん!?

 

 

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かつて豚の餌さんは、喪42にて調理実習で初めて作った料理をもこっちに食べさせ、「豚の餌」「生ゴミ」という散々な感想を抱かせた挙句トイレで吐かせるという、殺人料理神拳の使い手です。
そんな経歴を持つ彼女ですが、加藤さんの影に隠れて姿は見えないものの、(もし破局したとかそういう事がなければ)言及されていた「彼氏」「あーん」をしているのでしょうか、手作りと思われる弁当の具を机の向かい側へと向けています。
彼氏に手料理を食べさせてあげるという一見微笑ましいシーンなのですが、当時から料理の実力が全く成長していなかった場合、回避不可能の殺人兵器を彼氏に向けていることと同義です。例えるなら、ケンシロウに指を向けられているようなもんです。

 

 

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やっぱりブタの餌か……ブタの餌は彼氏の胃袋へ行け!

 

 

……ですが、豚の餌さんの料理が生ゴミだったのは一年も前の話です。
一年の間に(二人の交際が順調であったならば)愛を育み、日々料理の研鑽を怠らなかった可能性だってあるわけですよ。
寧ろ(彼氏が「まずい」と言い出せぬまま)全く成長していなかったのなら、それはそれで彼氏の舌と胃が機械化手術を受けていないか心配です(喪42では彼氏の嘔吐したと思われるシーンが存在します)。今後の登場でその辺り(料理の腕)の言及が少しでもあると嬉しいですね。

 

また、豚の餌さんが3-5所属かどうかについてですが、この扉絵からだけでは判断できません。
ですがその対面に座る豚の餌さんの(推定)彼氏については3-5所属で間違いなさそうです。
何故なら豚の餌さんの彼氏は机の正面側に座っているので、二人は彼氏の席で食べていると考えるのが自然なのです。一方豚の餌さんは対面側に座っているので、3-5に所属していない可能性も十分あり得る訳ですね。

 

 

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そして、教室の開いたドアから姿を覗かせるのは、廊下をかける少女ことうっちー
残念ながら前回は登板機会がありませんでしたが、全国のうっちーファンの期待に応えんと扉絵からいきなりの登場です。果たしてどのように絡んでいくのか、それとも背景で躍動するのか……今回も入念にチェックする必要があるかもしれません。

 

 

 

 

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さて、本編に入っていきましょう。
まずスポットライトが当てられるのは、加藤さんとそばかすさんの二人。扉絵のカットからの続きのようです。
「今日3−4(そっち)に南さん来てたりする?」とそばかすさんに問いかける加藤さん。この台詞で、扉絵の教室が3−5だと分かるわけですね(加藤さんが机の正面側に座っている事からも分かりますが)。
対するそばかすさん、心当たりがない様子です。
どうやら加藤さん、ネズミーの一件から離れていってしまった南さんの事を気にかけているのか、「昨日は来てたみたいだけど」の一言に、「そっか…」と視線を落とします。
う〜ん、まさに聖女ですね……誰にでも隔てなく優しいことが改めて伺えるやり取りです。
ただ、この加藤さんの優しさに南さんが応えられるかというと、現状では到底難しいであろうことは悲しいですね……。

 

 

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二人の間に流れるのほほんとした雰囲気が、いかに今の原幕では貴重なものであったかすぐ知ることになる。

 


「それにしても今日3−5人少なくない?」と辺りを見渡すそばかすさんに、髪をかきあげる仕草をしながら返答する加藤さん。
加藤さんが交友関係の広い人物であることはこれまでの描写から容易に想像できますが、そんな中でも二人きりの食事の相手として選ばれるそばかすさん。
きっと、二人の仲は相当良いのでしょうね。
そんな緩やかで平和な時間が流れていく3−5でしたが……。

 

 

 

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一変して、学食では二人の獣が向かい合うという緊張感溢れる事態になっていました。ざわめく空気、一点に向けられる熱を帯びたギラギラとした視線……。
その向けられた視線の中には、南さん一行のものもありました。
「あれ吉田さんじゃない?」「何 ケンカ?」と、小宮山さんをぎりりと鋭く睨みつける吉田さんへ好奇心混じりの視線を向けます。
そんな中、南さんといえば……。

 

 

 

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うん……なんというか、「らしい」ですね。
人間がそれこそ人間関係に問わずに何か失敗した時、「他の奴も自分のように失敗してくれ」と呪うような気持ち──。
今の南さんが人間関係で失敗した自分を差し置いて、誰かの人間関係の幸せを願う事は考えにくく、寧ろそういう方向に考えが行く方が自然だと思います。
これはある意味とても人間らしい台詞と言えます。顔と口調は非常に可愛らしいのが、台詞の内容とギャップがあってそれも良いです。(好感は抱きませんが。)
もちろん、人としてどうなのか……というのはあるかもしれませんが、彼女は(というより、彼女に限らず登場人物の殆どは)まだ高校生です。かつてのもこっちも、リア充を憎み呪っていたぐらいですから。
つまり現状は、この反応が一番「南さんらしい」と思います。ですがこれから先、南さんが成長し、人間関係が改善するような事がもし起きたとしたら、また違うモノローグが聞けるのではないでしょうか。

 

 

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怒ってる顔もかわいい吉田さん

 

一方、学食中の視線を釘付けにしてしまったこみさん。
学年問わず、あらゆるクラスの休み時間の話題をかっさらってしまうのはほぼ間違いないこの状況……このままではこみさんがやべーやつであることが学校中の共通認識になってしまいそうです。
それを覚悟の上で啖呵を切った……わけではなく、半ば衝動的にしてしまった行動のようで、すぐに我に返ると猛烈に後悔し始めるこみさん。クールダウンが早いのは良いことですね。(沸騰するのも早すぎるけど)
ただ、こみさんの優先順位としては、周りの沢山の目線よりは「智貴の前でやってしまった」事のほうがダメージが大きいようです。恐らく、こみさんは無関係な人からの視線はあまり気にしないのでしょうね。なるほど、これなら私服が凄いのも納得です。

ですが、こみさんが冷静になったところで、一度火の点いた吉田さんが冷静になる訳ではありません。後悔先に立たず、「あいつらの友達なんだから止めてくれないかな……」と、助けを求めるようにもこっち一行のテーブルに視線を送りますが……。

 

 

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呆れるもこっちの横で、こみさん陣営であるはずの伊藤さんはなんとここで「見」にまわります。この独特な言い回し、まるでバトル漫画か麻雀漫画のようです。
しかも自分の友人がヤンキーに向かって怒鳴ったという異常事態が発生したにも関わらず、(ことがまた何かやったのかな?)と、「庭先で飼ってる犬がなんか吠えてるぞ」程度のリアクションで済ませています。
こみさんが普段から奇行しすぎてもう慣れてしまったのか、それとも伊藤さんが図太すぎるか、或いは両方かは分かりませんが面白すぎます。

 

 

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そういえば、あの幻影旅団のクロロも緊迫した状況の中で「"凝"(オーラを集中させる技。このシーンでは目に集中させている)をおこたるなよ」と団員に注意喚起していました。
クロロと言えば、ハンターハンター世界でトップレベルの実力を持つ念能力者。同じく只者ではないオーラを放っている伊藤さんが、異常な状況を前にしても「"見"をおこたらない」という結論に達したのも納得できます。(?)

 

 

一方、岡田さんとネモは止めに入るか考えていたようですが、前回「メガネやべーやつだな……」とこみさんの狂犬っぷりに気づいていた岡田さん、「メガネのほうに原因ありそうだしな」正答を導き出し、「これ以上発展しそうなら吉田に言うよ」と冷静な判断を下します。
かつて(喪118)はもこっちに原因があるにも関わらず「ヤンキーによるいじめ」だと判断して吉田さんを批難した岡田さんが、「吉田さんに非はない」と判断し、吉田さんの為を思って止めに入る事を考えるというのは実に感慨深いものがあります。おかよし良い…。尊い…。

 

 

が……そんな冷静さを保つ岡田さん・伊藤さんとは対照的に、真子はその優しくお人好しな性格からか、すぐに席を立ち吉田さんの元へ向かおうとします。
それを「大丈夫だよ」と止めたのは田村さんでした。
吉田さんが「そこまでやりすぎないから」──つまり本当は優しい性格であることを交友の深さから知っているからこそ、ここは動かなくていいと。
……と、ここまでであれば田村さんの吉田さんへの信頼が垣間見れる良いシーン、だったのですが……。

 

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真子と比べると随分減っていないパスタ。食事よりもマウントに夢中に…。

 

ネモへのマウントへと繋がってしまいます。
先週と同じシーンなのでまだネモへのマウントが続いている事自体は納得できるのですが、連載を追いかけている側の私の感覚では2週間経ってもまだ田村さんがマウントを取っているように感じてしまうのが……単行本で一気に読めば少しは印象が違って見えるかもしれません。
ところで読者の方にはお分かりだとは思いますが、この台詞はもこっちに確認を取るような体を取ってはいますが、本質はネモへの口撃なわけで。田村さん、相当余裕が無いようですね……。(どう余裕がないのかは、このレビューの最後で解説致します)
「私と黒木さんと吉田さんはよく一緒にいるから」
前話の喪133のレビューで、『「私」という主語をつける事により、ネモに対して自分の優位性を強調している』という風に解説させて頂きましたが、このシーンでは『よく一緒にいる黒木さんと吉田さん』に『私』を含めることで、その輪の中に居ないネモに対する優位性を強調しているパターンですね。
……前回まではマウントを取られる度に困惑した表情を浮かべていたネモですが、今回は笑顔(目は笑っていない)になっています。田村さんの度重なるマウントに対して、かつては自分が宣言した『しつこく絡まれる』という事に、既に慣れつつあるのでしょうか。この後にも、それが伺えるシーンがあります。

 

 

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一方、そんな脇で起こっている事など知る由もないこみさん。
デッドボールを与えた時の日本野球でのマナーに置き換えて自分の現状を省みます。本当に隙あらば野球(主にロッテ)です。
「おい さっきから何黙ってんだ なんか言えよ!」と怒鳴る吉田さんに(素直に謝罪しよう……)と決心しますが、それを何故か(素謝だな……)と略すこみさん。
……まさかとは思いますが、万が一こんな状況で「素射=素直に◯◯です」を連想しているなら本当に反省しているか怪しく思えるのですが……いえ、邪推はよくありませんよね。こみさんが優しい女の子なのは、我々が一番知っていることです。本当に悪いと思っているに決まってます。この後のシーンでもそれが分か……

 

 

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本音漏れてるぞ

 

……分かるんです!こみさんは本当に反省しているんです!!

 

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そしてこみさんはたくさんの汗を流しながらも弁解を始めます。
一見ギャグに特化したシーンなのですが、さりげなく「私の親友」というワードが入っている事に注目です。
ここは、「私の友人」でも良かったはずです。
もちろん、「それってもう私の弟みたいなもの」「弟の智貴くんが」という台詞を言いたかったが為に「親友」とオーバーに言った可能性はあります。何故なら「私の友人の弟」ならただの他人という印象になってしまいますが、「私の親友の弟」なら「友人の弟」よりはまだ距離が近い印象を抱きますからね。それでも「私の弟みたいなもの」にはならねーだろ
……とはいえ、単なる大嫌いな人間に対して嘘でも「親友」というワードは中々チョイスし辛いのではないかと思います。もしかしたら、こみさんの複雑な心境の裏に隠れる何か……が垣間見えたのかもしれません。そうだと嬉しいのですが。

 

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そしてその後、「まぁその早とちりで声荒げてごめん…」と目を伏せるこみさん。
言葉通り素謝したこみさんでしたが、吉田さんの関心は「智貴」という弟の名前へと移ってしまいます。
吉田さんは良くも悪くも子供っぽい所が多いですからね……興味がすぐ他のものに移ってしまう、というのは子供らしいので納得です。もしくは「自分は悪くない」+「とりあえず謝罪された」ので、もう吉田さんの中ではどうでもよくなった(一応の区切りが付いた)とも考えられます。(もしこの説が正しい場合、この後出てくる「おい話終わってねーぞ!」という台詞は「なんなんだよさっきから!」という台詞に掛かります)

 

そして吉田さん、なんだか智貴に対しての心の距離の詰め方が非常に早い気がするのですが、これがヤンキーのコミュ力ということなのでしょうか。先輩である上にナメられる事を嫌いがちなヤンキーであるにも関わらず、「別に呼び捨てでもかまわねーけどな」という台詞も結構驚きです。

 

が……元はと言えば自分から仕掛けたこみさんサイドが悪いとは言え、謝罪を無視されるのは苛ついても仕方がないでしょう。
それに智貴とイチャついているのならそのイライラも10倍といったところでしょうか……ここでプレビュー画像のシーン、「人が謝ってる最中イチャってんじゃねーよ!!」と物凄い口角で怒鳴り散らかすこみさん。
これで一度は鎮火しかけた二人の間の導火線にまた火が点いてしまいます。
……その時……!

 

 

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ああーっと!!
「見」に回っていた伊藤審判、ここでスポーティに立ち上がりました。
どうやら乱闘寸前の小宮山選手と吉田選手の様子を見て耐えかねたのか、警告試合 - Wikipediaを宣告するようです。

 

 

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そして(面倒くせぇ いつ終わんだこれ?)と呆然と喧嘩を見つめていた智貴(完全に被害者)に、またもバトル漫画っぽい上に強キャラ臭漂う台詞を放つ伊藤さん。
恐らくこれらの台詞チョイスは狙ってはおらず天然でやっているとは思うのですが、伊藤さんのまた新たな魅力を見つけてしまいましたね。やはりこみさんの友達だけあって只者ではないんですねえ……。(感慨深げに)

 

そして伊藤さん、宣言どおりに「こと落ち着いて みんな見てるよ」と二の腕を引っ張り、牙をむき出しにする狂犬を静めようとします。流石はビーストテイマー、獣の扱い方には慣れているようです。
一方、伊藤さんに託されてしまった智貴もなんとかして吉田さんを止めようと、左腕を翳して静止しようとするのですが……。

 

 

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胸に埋もれる手をガン見しながらも表情の変わらない伊藤さん


どうしてこうなってしまったのか。
どうやら黒木家の人間の手はヤンキーにのみダイソンの吸引力が働いてしまうのか、吉田さんの胸に智貴の手が埋もれます。いわゆる「ラッキースケベ」に該当する筈なのですが、智貴は終始青ざめているのが印象的です。
そして、静止した時計の針がまた動き出した瞬間──

 

 

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どうしてそういう発想に至ってしまったのか。

恐らくは「智貴くんに触られるのはご褒美」「智貴くんから触るわけがない」という思考回路から、「智貴が触った」でもなく「不幸な事故で」でもなく「吉田さんが触らせた」のはこみさんの中でどうやら確定事項になったらしく、

「何年下におっぱいさわらせて真っ赤になってんだ!?」
「あっ!? 感じてんのか!? おっぱいで手のひら感じたのか!?」

と、もこっちの言語センスを彷彿とさせる罵倒をまくし立てます。
……こみさん、先程伊藤さんに「みんな見てるよ」と言われた事を完全に忘れてしまったのでしょうか、吉田さんに対して衆人環視の中「おっぱいを触らせたビッチ(しかも感じてる)」という印象を抱かせるようなセリフを叫ぶというとんでもないセクハラをしてしまいます。ダメだこの人……早くなんとかしないと……。

 

 

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そして血で血を洗う狂犬とネズミーによる仁義なき戦いは、ドス手刀による刺突により決着がついたようです。
正直こみさんが吉田さんにこうされるのもやむ無しなんですが、明らかにヤバイエフェクトが掛かってるのは気の所為でしょうか。(なんか出てる……)

 

 

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そして友人の狂犬っぷりと大惨事っぷり、そして手刀を受けて蹲る様を見届けた伊藤さんの真っ先に出てきた感想は(静かになった)
恐らくは(色々あったけど結果的に静かになって良かった)というニュアンスを含んでいるのでしょうが、それまでの経過が経過なだけにあまりにも淡白で冷静すぎる感想です。
(ことがまた何かやったのかな)というモノローグの通り、こみさんに大体非があると判断して友人でも特別に肩入れすることなく(跪くこみさんに手を貸すこともなく)、状況を客観視したからこそこの感想が出た……という可能性も十分ありますが、それでもやっぱりこの経過を見て「静かになった」だけで済ませるのは只者じゃないです。淡々とした反応を見せるだけで、これだけ読者にインパクトを与えてくるキャラクターというのも中々居ませんよ……!

 

 

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顔を真赤にして退場してしまった吉田さん……友人が大恥をかいて去ってしまったというのに、静観を続けてマウントを取ってる場合ではありません。
先程は田村さんに静止されてしまった真子も今回ばかりは強い口調で「ゆり!吉田さん追いかけるよ」と言い切ります。やはり、暴走してしまった田村さんを制御できるのはなんだかんだで真子しか居ないのだなと実感するシーンでもあります。
一方のネモ、前述した通り慣れつつあるのか、(しつこい)と内心では思いながらも微笑みを浮かべています。最初と違って感情を表情に出さなくなったということは余裕が生まれつつあるようです──というより、前回焦っているような表情を浮かべていたのは「田村さんが食堂に居ること」「(まだ)入ってくる!?」の二つの予想外の要素に対して困惑していたのが大きく、そのマウントを取られた言葉の内容はあまり効いていないのではないでしょうか(前回から既に田村さんに言われた内容から話題を発展させるという冷静さを見せていましたからね)。

 

一方の岡田さんは想像の遥か斜め上を行くような事態に「なんか色々すごいことになってるな…」と一言。「静かになった」で済ませた伊藤さんとは違いかなり読者の目線に近いというか常識的な感想で、「ああ、マトモだ……」と実家のような安心感を覚えました。
するともこっち、ここで席を立って智貴の元へと向かいました。
……なるほど。今回も智貴は不幸にも事故に巻き込まれた形です。「もう勘弁してくれ」と言わんばかりに眉を顰め、冷や汗を流して立ち尽くす弟を心配し、姉として弟の心のケアをするのでしょう。流石お姉ちゃん、頼りになりますね!

 

 

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お前もマウント取るのかよ。

 

 

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そして場面は変わり……!? いつの間に!?
なんとこの終盤になって内投手の登板機会がやってきたようです。これはクローザーですね。
いつぞやのネモによるもこっちのモノマネシーンを彷彿とさせる登場の仕方ですね。あの時も岡田さんの横に瞬間移動して来たので、ひょっとしたら岡田さんの横にポータルが存在しているのかもしれません。

 

 

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岡田さんがツッコミの過労で倒れないか心配です

 


ネモは智貴が弟であることを悟り、「意外と似てるかもね 目とか雰囲気とか」と納得した様子です。恐らくは田村さんの台詞と、もこっちが話しかけに行ったという二つの要素もあって推測できたのだと思いますが、うっちーレベルの遺伝子専門家でなければ中々黒木姉弟の共通事項を見抜きにくい中、ネモはだいぶん健闘していると言えます。
そして元はと言えば「クロを取り巻く面白い環境に混ざること」を目的の一つとしてもこっちグループに飛び込んだネモ。今回もその常識はずれの空間に巻き込まれてさぞ満足かと思いきや……。

 

 

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ァ…………………………………………………………。
…………………………………………。
…………失礼しました。

 

ネモのもこっちに対する素直な好感が示されたモノローグってものすごく貴重なんですよ。我々読者視点からすれば態度や言動で分かるとはいえ、改めてこうやって示されるとなるとまた違うというか。
(面白かったけど…… あまり話せなかったな)
……つまり、「もっとクロと話したかったな」という素直で素朴な気持ちが……。いやあ……良いですよねえ……。良い……。良いんですよ……。この優しくも儚げな笑顔もなんとも言えないですよ……。
前回、私は岡田さんが謝罪する機会を設ける目的でもこっちを食事に誘ったのではないか……と推測しましたが、このモノローグを見る限り、ネモは本当に二人きりでゆっくり話す機会が欲しくて誘ったのでしょう。だとするなら、当初の目的を果たせなかったこの微笑みもより切なく感じてしまいます。

 

 

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わたモテではお馴染みのいい雰囲気の時に出やすいエフェクト

 

ですが、学校生活はまだ一年弱あります。
何気ないこのもこっちの「まあそのうちな……」というくだけた返事も、今のネモにとっては嬉しい筈です。
ひょっとしたら、「素のクロ」を引き出す目的を達成した以上、ネモのもこっちに対する当たり方もだんだん穏やかなものになっていくのかもしれないと、この一連のやり取りを見て私は思いました。

 

そして教室に戻りますが、学食での騒動はやはりすぐに知れ渡ったのか、加藤さんの耳にも届いていたようです。
「黒木の友達と吉田がなー」と説明する岡田さんに対して「へー 私も行けばよかったな たのしそー」と微笑む加藤さん。
加藤さん、行くことないですよ。多分加藤さんが想像している光景とは全然違います。

 

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アッ……………………
まさに「見返り美人」と形容すべきでしょうか、お母さんを通り越したNo.1の笑顔をもこっちに向ける加藤さん。日差しも一際輝いて見えることでしょう。
そんな加藤さんの笑顔を受け……

 

 

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案の定一発ノックアウトされるもこっち。加藤さんのアタックは基本的に防御貫通属性(ガード不可)を持っているのでしょうね、もこっちは終始ガードできずにまともに食らっている印象です。
「清楚ビッチ」こと平沢さんとの食事の約束と被ってしまいますが、断れるはずもなく恍惚とした表情でうなずいてしまいます。こんなの貢ぐしかねぇ!

 

 

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……が。そんな隣で行われるやり取りを二人の獣が見逃すはずもありません。
田村さんは「むっ」とした浮気相手を咎めるような視線を向ける一方、ネモは口元は微笑んでいるものの頬杖をついています(ネモが頬杖をつく時といえば…)。二人共分かりやすくて可愛いですね。


そして翌日、憧れの先輩のもとに馳せ参じた平沢さんが見た光景は……

 

 

 

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うわあ なんだか凄いことになっちゃったぞ

 

 
加藤さんの「今日はなんか中庭混んでるね」の言葉通りの光景です。
吉田さん一行は恐らく普段の習慣として中庭で食事を取っていると思うのですが、シートを敷いて駆けつける田村さんは流石に前話と同じ理由は使えないでしょうし、ネモも先程の切なさを帯びた微笑みから想像出来ないぐらいの、まさかの横に座るという豪胆さを見せつけています。そして遥か背後にはうっちー一行の姿があるのですが、これも偶然なのでしょうか……?
そして気になるのは平沢さんの座るスペースが無いことです。更に詰められるんでしょうか、このベンチ。

 

 

 

さて……改めて申し上げますが、非常に濃い回でしたね。情報量がとにかく多かったこともありまとめるのが大変で、いつもよりレビューの執筆に時間が掛かってしまいました。別の人物同士の会話が同時進行していた為、コマ間の視点切り替えが多かったですよね。ただそれを扉絵を差し引くと僅か9ページで纏めてしまうのですから、本当に……
……
この内容の濃さで9ページだったんですね!? 自分で今書いていて改めて衝撃を受けました。

 

さて、「周りは騒がしい」というサブタイトルの通り結構慌ただしく動いていた今回のエピソードですが、そんな中で「ほっこり」というか、比較的落ち着いて見れたのは岡田さんと加藤さんですかね。
岡田さんは相変わらずの常識人っぷりでしたし、今後ツッコミの仕事の発注が増えるのではないかという予感がします。加藤さんは、今回のエピソード冒頭のあの穏やかな会話が話の中盤辺りにあれば良い清涼剤になったのかも……と思いました(単行本で読むと、二話連続で読んでちょうど中盤に来ますからバランスが良いのかも)。
そして、私はてっきり伊藤さんが岡田さんや智貴と同じくツッコミポジションのキャラクターになるのだろうと思っていたのですが、どうやらそうではなさそうですね。余りにも立ち回りがシュール過ぎて突っ込みというよりは突っ込まれる側の一人でした。今後も伊藤さんの予測できない活躍に期待を抑えられません。

 

そして、ちょっと心配なのは田村さんの精神的余裕についてですね。
内容が濃すぎるので実感が湧きませんが、よくよく考えるとまだ遠足編が終わってから3話しか経っていないので3話で劇的に変わる訳がないんですよね。ですが、ネモの「嫌でも絡んでいくよ」という台詞への返事なのかもしれませんが、今回の行動はネモからの「しつこい」という感想もやむ無しでしたから……。
田村さんは2年生の終わり頃から精神的に不安定になってしまいましたが、あれはクラス替えを前にして「いつまでもこの4人で居られる訳がない。いつか終わりが来る」という事を実感したからだと思うんですよね。台詞からも、一度環境が離れてしまえばもう終わりだと思っている事が伺えます。

 

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余裕のない田村さんには今という時間しかない

 


よくよく思い返せば、クラス替えは荻野運命が味方して4人一緒のクラスになることが出来ましたが、卒業という絶対に訪れる別れのイベントは避けることは出来ません。だから田村さんの心には「後一年もない」という重い枷が嵌められているのではないでしょうか。
だからこそ、3年生になった頃から「有限である4人」に執着してしまい、それに介入しようとする存在に対して過剰に反応してしまうのだと思います。田村さん一人では到底この不安を制御する事は出来ないのでしょう……。
いつか必ず訪れる、逃れられない離別。それとどう向き合い、心の整理を付けていくかが田村さんにとっての課題であり、今後の焦点になる部分なのかなと思います。……なんだか想像しただけで胸が苦しいですね……。

 

 

そしてネモは終盤のあの廊下のシーンが、私の心によく響きました。
先程も書きましたが、これから少しずつネモの当たり方が穏やかになる……つまり、ネモがより素直な気持ちをもこっちに見せるようになるのではないかな、と。
もしそうなってくると、ネモのその変化にもこっちも困惑すると同時に、今は結構開いている心の距離も狭まっていくのではないかな、と思うんですよね。やっぱりネモクロからは目が離せません。

 

 

そして今回は不幸な事故で触られてしまった挙げ句セクハラを受けて散々だった吉田さんですが、中庭の様子を見る限り立ち直りが早くてよかったです。あんな風評が噂になってしまったら私は数日休む(下手したら不登校になる)自信があります。
今回更に深まった智貴との関係もどうなるか気になるところですね。たぶん、吉田さんは先輩と舎弟というような関係を望んでいるのだと思いますが……。「触られた」という誤解がもし解けていないのであれば、また何か一波乱あるのかなあという気もします。

 

こみさんは今回のエピソードの半分主役というか、終始目立っていましたが、瞬間湯沸かし器な部分をどうにかしないとこの先事故が多発してしまうと思います。
ビーストテイマーの伊藤さんの調教に期待したい……と一瞬思ったのですが、多分伊藤さんは見てるだけなんでしょうね。伊藤さん、何を考えてこみさんと付き合っているのか、本当に気になります……!今後のいとこみの描写にも注目です!

 

 

さて、今回の記事は長くなってしまいましたが、如何でしたでしょうか。
更新は二週間後、座して待ちましょう!